殺される運命でも馬には幸せを

日本で約7000頭、世界で約90000頭の馬(サラブレッド)が人間によって産まれています。

エサを与えて適切にケアすればサラブレッドは20歳くらい生きるとのことですが、
よく言われている通り、買い手がつかなかったりレースで活躍できなかった90%以上の馬たちは3歳までには殺処分、つまり殺されてしまうのです。

かと言って「殺処分を一切無くせ」というのは無理な話です。
それに「競馬を廃止しろ」と言ったら産まれてきたサラブレッド全てが行き場を失い処分されることになってしまいます。

競馬は多くの人間に感動を与える娯楽であり、そのために多くのお金が動く娯楽産業です。
サラブレッドはまさにその娯楽産業のためだけに作られた経済動物です。
サバンナでのんびり暮らしている馬を連れてきたわけではありません。
何百年も昔から産まれてから死ぬまで人間に管理されているまさに人造生物なのです。

僕は、人でも何でもただ長生きさせることがよいとは思いません。
生かしながら苦しめることこそが虐待であり何より悪いことで、それに比べたら苦しめずに殺すことの方がよいと考えます。

自分自身に置き換えても、十分なケアを受けられず、褒められもせず、寂しく窮屈な環境でただ長生きさせられることは死ぬことより嫌ではないでしょうか。
レースで活躍できなかった馬を苦しまない方法で殺すことは、非常に罪深いことですが仕方ないことだと思います。
そこが経済動物サラブレッドの寿命なのでしょう。

たとえレースで活躍できなければ殺されると分かっていても、勝負に勝つことは難しい。
できないものはできない。
できないことをやらされるのは辛い。

人間に、自分に置き換えても一緒です。
僕も高校受験・大学受験という勝負をやらされ、競争に勝つことを求められる辛さを味わいました。
たとえ「東大に入れなければ殺す」と言われたとしても僕には無理だったでしょう。
それならせめて短い間楽しい人生を送らせてもらって殺すならサクッと殺してもらいたいと思うはずです。

馬も未勝利で終わって短い生涯で終わるとしても、生きている間は楽しく過ごしてもらいたい。
勝てなくてもがんばったら褒めてあげたい。
そして、厳しい世界だから殺さなければならないのは仕方ない。
最大限の配慮をしてどうか苦しめず眠るように殺してほしい・・・。

せめて重賞勝ち馬は殺さないで天寿を全うさせてやってほしいと思いますよ。
でも大多数の未勝利馬や1勝馬に対して、エサ代を払えない僕が「殺さないで」なんて勝手なことは言えません。

僕が出資した2015年産馬5頭はみんな3歳2月時点で未勝利。
弱いですが、レースで勝つことを夢見ながら走る姿を見ることを喜びに応援しています。

もちろん出資馬を選んだ時には僕は重賞勝ちできると見て選んでいます。
でも期待なんて期待した人の勝手。
馬は自分のペースでやれるだけやってくれればいいんです。

また、勝てなかったからと言って騎手や調教師、牧場スタッフのことも責めません。
トップの人たちが関われる馬は限られています。
縁のあった人との運命に殉じるしかないです。
たとえへたくそでもわざと負けてるわけではなく、彼らも自分の生活のために馬を勝たせようとしているはずですから。

勝って長生きしたり子孫を残したりすることが全てではありません。
たとえ弱くても競走馬として生きた彼らみんなを僕は忘れない。
とにかく調教もレースも楽しんで愛されて短い馬生を全うしてほしいと願っています。

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