ラフィアンの募集価格を見ると、ゴールドシップ産駒の価格は明らかに上昇している
かつては手頃な価格で手が届く「脇役の種牡馬」だったが、自家生産で1億円、7000万円の募集価格がつくようになり、今や驚きの水準に達している
本当にその価値があるのか──損をするのではないか
そう感じる人がいても不思議ではない
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だが、少し視点を引いてみると、日本の芝中長距離路線を取り巻く環境は大きく変わりつつある
長らく頂点に君臨してきたディープインパクトとハーツクライはすでに種牡馬リストから去り、その影響力も年々薄れてきている
新たな主役を求めて、多くの種牡馬がその座を争うなか、最も勢いがあるのはキタサンブラックだ
世界最強馬イクイノックスに続きダービー馬クロワデュノールを送り出し、確固たる地位を築こうとしている
その実績を反映して、セレクトセールでは産駒の1億円超え落札が続出
今、最も注目される種牡馬のひとつであることは間違いない。
では、続くのはどの馬か?
リーディング上位に名を連ねるキズナやロードカナロアは、確かな成績を残しているものの、どちらも芝2000m以下の印象が強い
ダービー・ジャパンカップ・有馬記念といった王道路線では、適性面で一歩譲る印象は否めない
セレクトセールではコントレイルやイクイノックスといった新鋭種牡馬が高値で取引されたが、いずれも初年度産駒が走り始めたばかり
実績がない以上、現時点では「期待先行」と言わざるを得ない
実はダート向き、実は短距離向き──そんな可能性も否定はできない
ルーラーシップやレイデオロといった中堅にも地力はあるが、芝中長距離の「主役」を担うには、もう一押し足りない印象が残る
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そんななかで、キタサンブラックと並び立つ可能性を秘める存在が、ゴールドシップであると私は見ている
スタミナ豊富なゴールドシップ産駒は芝中長距離を得意とするが、そこはディープインパクト産駒とハーツクライ産駒が強さを発揮してきた舞台でもあった
両馬が健在だった時代、ゴールドシップは常に強力なライバルの影に隠れ、不遇な時代を過ごしていたと言える
それでも、まだディープ産駒が健在だった2022年に、ユーバーレーベンがオークスを制した
その時代にディープ産駒と真正面から渡り合い、結果を残した種牡馬は決して多くない
その点で、ゴールドシップは極めて稀有な存在である
さらに2025年、メイショウタバルが宝塚記念を勝ち、ついに古馬GIのタイトルを手中に収めた
これは偶然ではなく、快進撃の序章にすぎないかもしれない
ディープインパクトとハーツクライがいなくなった今こそ、ゴールドシップが真の全盛期を迎えてもおかしくない
中長距離路線の「空白」を埋めるだけでなく、その中心に立つ資質を確実に備えている
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価格が上がるには、理由がある
たしかに、以前より高くなった
だが、時代の追い風は明らかに吹いている
「今が買い時」と言えるほどに、彼の評価はまだ途上にある
もしキタサンブラックと肩を並べる存在だとすれば──高額なゴールドシップ産駒にも、挑戦する価値が浮かび上がってくるのではないだろうか